脳の病気と治療

  1. HOME
  2. 脳の病気と治療
  3. 下垂体腺腫・下垂体腫瘍の治療

下垂体腺腫・下垂体腫瘍の治療

あなたの下垂体腫瘍は本当に治療が必要でしょうか?

下垂体は頭蓋内のほぼ中央に位置する重要な内分泌器官で、ここに発生する病気には下垂体腺腫をはじめとして、ラトケ嚢胞、頭蓋咽頭腫、下垂体炎など様々です。近年は、脳のMRIが気軽に取れるようになったため、こうした病変が無症状の内にみつかることが多くなりました。

そこで問題になるのが、こうした病気が見つかったときに、全ての患者さまにとって、直ちに治療が必要でしょうか?答えは“No”です。無症状でみつかる下垂体腫瘍の内、そのほとんどは経過観察のみで長期にわたり問題を起こすことはありません。また、腫瘍の増大によって症状を出す場合でも、多くの場合には、数年の間、経過観察をすることで、治療の必要性がはっきり診断でき、しかも、それから治療を開始しても全く遅くありません。当科では、下垂体腫瘍の患者さまが、下垂体腫瘍専門外来に紹介された場合に、腫瘍のMRI上での性状や患者さまの体内ホルモンの状態、全身の健康状態、患者さまのご希望などを考慮し、下垂体腫瘍専門の担当医師が、治療の必要性について患者さまと話し合いながら、判断を行います。実際に当院に紹介される下垂体腫瘍の患者さまのうち、多くの方が手術や内服治療を行わずに年に1-2回の外来通院のみで問題なく経過観察をしています。下垂体腫瘍の治療に熟知した医師の下で経過観察を行うことで不必要な治療や検査を減らし、実際に治療が必要な場合には、適切なタイミングで徹底した治療を行うことで、患者さまに納得していただける治療を実現します。近年、当院を受診される患者様のなかには「他院で“手術をしないとダメだ”といわれたのですが...」と納得せずにセカンド・オピニオンを得るために来院される方が非常に多いです。また、手術による治療が必要との見解で紹介された患者さまのうち、実際に手術が本当に必要な方は非常にわずかです。現在、外来で100人以上の下垂体腫瘍の患者さまを経過観察していますが、そのほとんどで問題を認めていません。近年、多くの病院で経営的立場から、“下垂体腫瘍 => 直ちに手術”という傾向が強まっています。もちろん、比較的小さな腫瘍であれば、手術で摘出してもほとんど合併症の可能性もなく、また、手術時間も短いでしょうから、一日、2人、3人と手術を行なうことは可能です。しかしながら、これらの腫瘍のほとんどは手術で摘出する必要がない場合が多いように思われます。私たちは、こうした「合併症の可能性が少ないなら手術で摘出したっていいでしょう」という手術量産主義に警鐘をならすべく、本来の外科治療の必要性を慎重に検討して、患者さま一人一人に適切な治療方針を提供するよう心掛けています。また、こうすることで、本当に入院して手術治療を必要とする患者さまへは、しっかりとした治療プログラムを提供することが可能となり、治療成績の向上につとめています。

当科における下垂体腫瘍の治療方針

近年、医療技術の進歩に伴い、下垂体腫瘍の治療も大きく変化しています。腫瘍の根絶を目指して「徹底的に治療を行う」ということはだけでなく、入院から手術前後の時期を含め、治療を受ける患者さまの体の負担を抑え、少しでも苦痛を減らして快適に過ごしてもらえるような「低侵襲な治療を行う」ことが重要視されています。当科では、全国にさきがけ、神経内視鏡や手術支援用ロボットアーム、手術用ナビゲーションシステムを導入し、下垂体腫瘍を含め、治療が比較的困難な頭蓋底腫瘍についても、経鼻内視鏡手術に取り組んできました。国内外で経験を積み内視鏡手術に300例以上の経験をもつ脳神経外科担当医と内分泌内科の専門医との協力により、治療を行っております。また、手術や内科的治療のみでは、安全な治療が困難な場合には、ガンマナイフやシナジーといった最新の放射縁治療装置により、病変部のみに限局した放射線照射が可能です。これら最新の治療技術を駆使することで、下垂体腫瘍でお悩みの患者さま、ひとりひとりに合った、最適の治療プロトコールを提供しています。

従来、下垂体手術のエキスパートといえば、顕微鏡を主体に用いた同じ手術方法を長年続けている熟練者という印象があす。しかしながら、下垂体手術における手術機器の進歩は目覚しく、これにより見えなかったものがみえるようになり、届かなかったところに届くようになっていきています。つまり、顕微鏡主体の手術ではなし得なかった手術ができるようになっているのです。当院では、大学病院の使命として、国内のみならず、欧米を中心とした海外の下垂体手術のエキスパートとも情報交換を常に行ない、最新の手術方法をアップデートすることでより有効で、安全な手術法について、検証し実現できるよう努力しています。

  

下垂体腫瘍に対する神経内視鏡手術

・従来の顕微鏡下手術と比較した神経内視鏡手術の利点

下垂体腺腫に対する治療としては、第一に手術があります。下垂体腺腫に対する手術は、従来、口腔内の粘膜を切開し、鼻腔に入る口唇下到達法(sublabial approach)が主流でした。しかしながら、これらの方法は、口腔から鼻腔にかけて広い範囲の粘膜剥離を必要としました。下垂体腫瘍に対する手術では、通常の脳神経外科手術で用いられる手術用顕微鏡を用いている施設もありますが、内視鏡に比べると得られる視野が狭く、また、トルコ鞍の外側や上方等に進展している腫瘍を直視下に摘出する事が困難であるといった欠点を有しておりました。こうした欠点を克服し、治療に伴う体の負担を軽減するために開発されたのが、この経鼻的内視鏡手術です。

・下垂体腫瘍に対する神経内視鏡手術

         当科では、全国にさきがけ、1998年より神経内視鏡単独による鼻腔からの手術を行っております。神経内視鏡を使う事で側方や上方へ伸展した腫瘍にも、安全にアプローチが可能となり、鼻中隔を鼻腔の奥で一部分だけ切開・剥離することで手術が可能であるため、手術時間が短く、術後の患者さまの身体への負担も少なく抑えられます。通常、手術の翌日から食事や歩行も可能です。

 現在、様々な施設で内視鏡手術が行われるようになってきていますが、その多くで“endonasal法”という手技が行われています。これは、鼻腔の奥で広範囲に鼻粘膜を除去して、下垂体に到達する方法です。これらは欧米で広く行われている方法で、比較的鼻が大きい欧米人に適した手術法ですが、鼻腔が小さな日本人に適しているとは言いがたいところがあります。しかも、鼻腔からの手術ではありますが、鼻や口からの空気を保温・保湿して、呼吸器へ送るといった副鼻腔の大切な機能を温存することができず、必ずしも低侵襲とはいえません。当科では、以前から“transnasal法”といった、独特の手術方法を行っております。この方法では、手術中は、鼻粘膜を内側から剥がして、一時的に術野の外側に除けてから下垂体に到達します。手術中はendonasal法に比べて広い術野を確保することが可能で、手術終了後は、剥がした鼻粘膜をもとどおり鼻中隔に戻すため、鼻腔内での鼻粘膜や副鼻腔の損傷を最小限に抑えることが可能です。また、患者さまの鼻腔の大きさに合わせて片側または両側の鼻腔を使用することで、鼻腔の小さな患者さまにも安全で苦痛の少ない治療を行っております。こうした患者さまの負担軽減を考慮した“日本人に適した”手術法の開発は、近年、国内外の学会でも高い評価を受けており、従来の手術法に代わり、多くの施設で採用されるようになって来ています。このように、新たな手術法や手術機械の開発を常日頃から行うことで、術後の患者さまの不快感を少しでも軽減できるよう、常日頃から努力しています。

下垂体腫瘍に対するガンマナイフ

           当院では、国内では初めて1990年よりガンマナイフによる治療を開始しており、現在まで約20年にわたる治療経験とデーターに基づき、下垂体腺腫に対するガンマナイフ治療を行っております。

・ガンマナイフとは

        ガンマナイフとは、放射線の201個の細かいビームを、虫眼鏡で太陽の光を一点に集めるように、病巣部のみに集中して照射する治療法です。この治療の良い点としては、重要な組織が密集している頭蓋内でも治療をすることができるという点です。しかも、患者さまの体の負担は非常に少なく、全身麻酔下での手術が困難な患者さまや、小児から高齢の方まで、どなたでも安全に治療が受けられます。治療は通常2泊3日の入院で、一般的な放射線療法でみられるような治療後に髪の毛が抜けるような心配もありません。治療当日は、頭部に特殊金属のフレームを固定し、MRIを施行します。その後、そのデーターをもとにコンピューターで腫瘍の存在する座標を正確に把握し、照射します。

下垂体腫瘍に対するガンマナイフの利点

ガンマナイフによる下垂体腫瘍の治療では、手術や従来の放射線治療と比べ、患者さまの負担は明らかに少なく、下垂体機能低下等の合併症も稀です。又、最大の利点は、治療が2泊3日と短期間で済み、内頚動脈や重要な脳神経を含んだ海綿静脈洞といわれる部分に進展を示している腫瘍に対しても、極めて安全に治療が可能である事です。その治療効果も、サイバーナイフやノバリスなどの分割照射型放射線治療と比較して早期に症状の改善が認められます。また、腫瘍の増殖制御という点でも非常に優れており、95%以上の高い有効性が報告されています。以上の点より、下垂体腫瘍のガンマナイフによる治療は、残存腫瘍や再発腫瘍、高齢者や全身合併症により安全な手術が困難な場合には、非常によい適応となります。

         外科的摘出に危険が伴ったり、困難が予想される部分は、安全な範囲での摘出にとどめ、残存部分は必要に応じて、後日カンマナイフで治療することで、治療に伴う危険性を抑え、徹底的な外科手術と同等の効果が得られます。

東京大学脳神経外科における下垂体腫瘍の治療の特徴

1)     下垂体腫瘍の治療に熟練した専門医が、治療の必要性から治療方針、経過観察に至るまで、一貫して御相談を受け、一人一人の患者さまに最適な治療計画を御提示いたします。

2)     脳神経外科、内分泌内科、放射線科の各専門医がそれぞれの知識と経験を生かして、患者さまの治療を検討し、方針を決定します。

3)     外科手術では、国内外で300例以上の経験を積んだ神経内視鏡手術のエキスパートによる経鼻的手術を行っており、患者さまの体の負担を最小限に抑えた手術法を採用しています。

4)     神経内視鏡を用いることで、安全な摘出が困難とされる上方や側方、頭蓋底の深くに進展した腫瘍でも、直視下で無理なく切除することが可能です。

5)     当院では、脳神経外科以外のすべての診療科において、日ごろから高い水準の治療が行われています。下垂体腫瘍の方では、心血管系(不整脈、心筋梗塞、狭心症など)や代謝内分泌系(高血圧、糖尿病、女性ならではの問題など)の病気を合併している方が少なくありません。こうした方々にも安心して治療を受けていただける環境を整えています。

6)     手術での摘出に著しい危険が伴う部分の腫瘍については、安全かつ充分な範囲の摘出に留め、残存部に対して必要に応じてガンマナイフや薬物療法による追加治療を行います。

下垂体腫瘍外来受診を希望される方へ

担当医による詳しい説明は、以下のホームページも御参照ください。http://www.nouproblem.jp/PituitaryTumor/index.html

*     疾患・治療に関するご相談につきましては、東京大学病院の、担当医の外来を受診してください。その際、過去におとりになられた画像(MRI・CTなど)や検査結果、現在かかりつけの医師からの紹介状などがありますと、病状の判断に大変役立ちますので、お持ちください。一人一人の患者様をしっかりと診察させていただくため、「下垂体腫瘍外来」は完全予約制とさせていただいております。お手数ですが、東京大学医学部附属病院の外来予約センター(03-5800-8630、12:30-17:00)に電話をして予約をお取りください。

*     当院では、他院にて治療が困難であった、難治性の下垂体腫瘍の治療を多く行っております。他院で初回治療をお受けになられたり、既に放射線治療などが行われた患者さまにつきましても、最善の治療を行うことをモットーとしております。下垂体腫瘍でお困りの方は、どなたでも、遠慮なく御相談下さい。尚、手術などの治療が必要な場合、外来受診から入院までにかかる時間は、患者さまの症状や御病気の状態によって様々です。通常、性急に治療を必要とする場合を除き、1-2ヶ月以上お待たせする場合があります。お待たせする場合でも、患者さまに不利益のないよう、十分に配慮させていただく所存でありますので、どうか御了承下さい。

担当医師

脳神経外科 辛 正廣 (しん まさひろ)

連絡先

外来受診

東京大学医学部附属病院
〒 113-8655  東京都文京区本郷 7-3-1
電話 03-3815-5411(代表)

下垂体腫瘍外来(毎週金曜日午後)

完全予約制です。外来受診につきましては、東京大学医学部附属病院のホームページ(http://www.h.u-tokyo.ac.jp/)を、御参照ください。

Page Top