強皮症の病因 of 東大皮膚科ホームページ

全身性強皮症の病因

強皮症の病因を理解するための3つの異常

 全身性強皮症(以下、単に強皮症とします)の病因は複雑であり、はっきりとはわかっていません。しかし、研究の進歩によって3つの異常が重要であることが明らかとなりました。その3つの異常とは①自己免疫、②線維化、③血管障害です。それぞれの異常についてはだんだんわかってきましたが、まだこの3つの異常がお互いにどの様に影響し合って強皮症という病気になるのかがわかっていません。強皮症の病因をジグソー・パズルに例えると、一つ一つのピースはだんだん集まってきましたが、まだいくつかの重要なピースが欠けていて、全体のジグソー・パズルが完成していないといえると思います。
以下にそれぞれの異常について説明します。

第一の異常:自己免疫とは?

 強皮症は自己免疫疾患といわれています。では自己免疫とは何でしょうか。例えば、健常人が細菌などに感染すると、抗体という、いわば細菌を破壊するミサイルが作られて、それによって感染が治癒します。ところが、強皮症ではどういうわけか細菌ではなく、自分に対して抗体(自己抗体といいます)が作られて、自分の体を壊してしまいます。これが自己免疫です。強皮症の一部は自己免疫でおきると考えられているのです。
強皮症でみられる自己抗体
 自己免疫の結果、強皮症では様々な自己抗体がみられます。代表的なものは、抗セントロメア抗体、抗トポイソメラーゼ I抗体です。抗セントロメア抗体は比較的軽症の患者さんに検出され、一方、抗トポイソメラーゼ I抗体は典型的な強皮症患者さんに陽性になることが多いことが知られています。このように、強皮症では自己抗体の種類が強皮症の病気の重さと関連しています。さらに、これらの自己抗体は症状が起こる前に血液中に現れてくると考えられています。従って、自己抗体は強皮症の病気の成り立ちに深く関わっていることは疑いありません。しかし、この自己抗体が実際にどのようにして強皮症の症状を引き起こしているかについては、実はまだよくわかっていないのです。

第二の異常:線維化とは?

 傷ができた時、その傷痕が少し盛り上がって治ったことはありませんか。この盛り上がっているのが線維化です。この線維化が皮膚や内臓に起こるのが強皮症の本態です。線維化を起こすと皮膚は硬くなります。その皮膚を顕微鏡で拡大してみると、皮膚の真皮と皮下脂肪組織という場所に膠原線維(コラーゲンともいいます)が著しく増えていることがわかります。膠原線維は線維芽細胞という細胞から作られます。強皮症はこの線維芽細胞が正常の線維芽細胞より、活発に膠原線維を作っており、その結果皮膚に過剰な膠原線維がたまって、線維化がおきるのです。何故強皮症では線維芽細胞が活発に働いているのかはわかりません。しかし、線維芽細胞自体に異常があるのではなく、むしろ線維芽細胞を活発にする物質が強皮症では増えていると考えられています。
線維化はどのように起こるのでしょうか?
 強皮症では血液中のリンパ球という細胞も線維芽細胞と同じように活発に働いています。リンパ球とは細菌やウイルスに感染したときに、これを殺菌するために働く細胞です。前に述べた抗体はこのリンパ球から作られます。このリンパ球が血液中から皮膚に移動し、そこで様々な細胞成長因子やサイトカインと呼ばれる物質を産生することが線維化の始まりと考えられています。これらの物質が線維芽細胞を刺激し、その結果線維芽細胞が過剰な膠原線維を産生し、線維化が起こるといわれています。
線維化を起こす細胞成長因子やサイトカイン
 強皮症で線維化を起こすと考えられている物質はいろいろありますが、どれが一番重要なのかは結論は出ていません。むしろ、様々な細胞成長因子やサイトカインが複雑に作用し合って線維化を作ると考えられています。

第三の異常:血管障害とは?

 強皮症ではレイノー症状がその80%以上の患者さんでみられます。レイノー症状とは寒冷刺激によって手指が白や紫に突然変化する症状です。レイノー症状は指の血管が収縮して、血管の内腔が狭くなった結果、血流が低下することによって生じます。また、前に述べた線維化が血管にも起こって、血管は硬くなり、広がりにくくなって、血流低下を来す一因となります。指先の血流が極端に低下すると、潰瘍ができます。この血管の硬化と血流低下は皮膚だけではなく、内臓にも起こります。例えば肺の血管に起こると肺高血圧症となり、腎臓の血管に起こると強皮症腎クリーゼと呼ばれる症状となります。また、血流低下を直接表すものではありませんが、指の爪のあま皮の部分に点状の黒い出血点(爪上皮出血点)が強皮症の患者さんでしばしばみられます。これも血管障害を反映する症状と考えられています。何故強皮症でこのような血管障害が起こるのかについてはまだよくわかっていません。